大阪の深層構造:「日想観」から見る万博と極楽浄土
大阪・河内地域に古くから根付く「極楽浄土への通路」としての都市構造と、2025年大阪・関西万博への批評的視座を論じた講演です。平安時代、大阪の上町台地から海(西)へ沈む夕日を拝観することは、極楽浄土を幻視する修行「日想観(じっそうかん)」そのものでした。本講演では、なぜ大阪は「西へ開く」必要があるのかについて考察します。1970年万博のレガシーや中世の「山寺」の機能を振り返りながら、現代の万博に見られる「閉じた円(リング)」の問題点と、大阪が本来有していた精神的な地理感覚について解説いたします。
【トピック】
1. 大阪万博への視座:1970年 vs 2025年
* 1970年万博の思想: 「人類の進歩と調和」という理念の下、岡本太郎氏の太陽の塔が突きつけた反近代的な問いかけと、そこから生まれた国立民族学博物館(民泊)という知的遺産について考察します。
* 2025年万博の「閉じた円」: 建築家・山口隆氏の指摘を引用し、巨大なリング(円)で閉じるのではなく、大阪本来の発展性である「西(海・アジア・世界)へ開く」構造の重要性を説きます。
2. 極楽への通路としての大阪
* 日想観(じっそうかん): 『観無量寿経』に基づき、大阪湾に沈む夕日を通じて極楽浄土を観想する信仰について解説します。四天王寺の西門は「極楽の東門」とされていました。
* 河内の聖地「往生院(おうじょういん)」: 四天王寺の真東(生駒山中腹)に位置し、彼岸の日には四天王寺の五重塔を串刺しにして夕日が沈む様子が見られる特権的な聖地について述べます。
3. 中世の死生観と地域社会
* 無常院としての機能: 平安中期の末法思想下、臨終を迎え極楽往生を願う場(無常院)としての寺院の役割と、安助上人の伝承について論じます。
* 「山の寺」という社会システム: 中世において、山岳寺院は単なる宗教施設ではなく、地域の武士や住民と結びつき、政治・経済・文化のセンターとして機能していた点について解説します。
サイエンスカフェ さらら 2025/12/18 より
小林 義孝(提河泉地域文化研究所)